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その日は、珍しくも何の予定もない日だった。 学会も、研究もすべてが一段落し、長期休みのため、授業を行う必要もない。 涼やかな風に、強すぎない日差し。 とてもいい天気で、何を思ったのか。 自分でも珍しいと思いながらも散歩と洒落込んでいる。 春先には薄紅色だった川沿いは、もうすっかり若葉色になっていた。 ゆっくりと、何かに導かれる様に川に沿って歩いていく。 時折顔にかかる木漏れ日に、とても穏やかな気持ちになった。 ただぼーっと、川沿いを歩く。 ふと辺りを見渡してみると、緑に囲まれた小さな公園を見つけた。 ブランコとベンチが一つずつ、昼時なのもあってか誰もいなかった。 近くの自販機で水を買ってから木陰が丁度良さげなベンチに座る。 程よい疲れに目を閉じた。 さわさわと風が木々を揺らし、遠くの方では車や人の音がしている。 こんなにゆっくりとするのはいつぶりだったか…。 爽やかな緑とその隙間から見える鮮やかな青。 時折木漏れ日が顔にかかるがそれも気にはならない。 ただ時間が過ぎるのを感じていた時だった。 視界の端にちらちらと映る色があった。 木々の緑でも、空の青でもない。 夕日を切り取ったかのような鮮やかな橙。意識を向けて見てみると、それはいつも夢に見ていた蝶だった。
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