笑いなよ?

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家の窓を開け、 仄かに暖かい弱めの扇風機に当たっているような心地よい春風を受け、 俺は……寝そうになっていた。 篠宮 鈴都(しのみや りんと)15歳。 俺は今日から市立の高校の一員となる。 「くっそ、 意外と入らねーな制服。 小ちゃ過ぎたな……失敗した」 制服相手に苦戦していると何の確認もせずに部屋の扉が開く。 「おい、 もうすぐ7時になんぞ。 のんびりしてんじゃ……」 大学生の兄、 蘭都が勝手に入ってきたのだ。 兄貴はいつもそうだ、 何の遠慮もしやしない。 俺の格好を見て肺活量が異常とも思える程深い溜息をつくと、 兄貴は部屋から出て行った。 「180もあんのにんな小せえもん着てっからだろバカが。 さっさとそのボサボサの金髪直してこい」 「中3の間に異常に伸びたんだよ! って、 髪の毛忘れてた!」 えー、 分かってきたと思うんですが、俺は見た目はパーフェクトだが頭はちょっとだけ悪いです。 つっても、兄貴を見返すために高校じゃめっちゃ頑張って成績上げまくるけどな。 「ん?」 出て行ったはずの兄貴が扉の隙間からこっちを覗いている。 何か嫌な予感。 「成績悪い奴が成績上げまくれるわけねぇだろ。 地道に頑張れよ。 それと早くしろ」 いちいち腹立つ兄だこと。 へいへい、 さっさとしますよ! たくっ。 部屋を出て一階のリビングに向かうと、 兄弟3人と親に冷めた目で見られた。 遅くなってスンマセンでした。 中1の妹がロングからショートに変えた黒髪を整えながら近づいてくる。 「入学式で遅刻とかやめてよね。 私が恥ずかしいから」 いや、お前も今日入学式じゃねーかよ。 超ゆっくりしてんじゃねーかよ。 テレビを見ながらくつろぐ一個下の長髪の弟は妹と俺を見て呆れた表情をしている。 「何だよ、 涼」 「いや、 どっちもバカなんだから準備くらいさっさとしたらいいのによ……って思ってな」 全くもって可愛くねぇ兄弟達だ。 俺は腹が立ったわけではないけど、 朝飯を食い忘れて出て行った。 ……何か最後に聞こえた気がしたな……まあいいか、さっさと行こう。 実は聞こえたのは涼の『ほらバカだ』という一言だった。
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