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4
異変は、夜明けと同時に起きた。
痕跡を消しながら後方から守るように着いてきていたルスの気配が無くなったのだ。
夜の闇が四人を匿っていたが、夜明けと共に辺りが一段明るくなると、馬に跨り林の中を移動する姿は目につくようになる。
三人は一度馬を降り、近くの岩場の影で身を隠しながら休息を取ることにした。
「ルスが何の言葉もなくいなくなる事はあり得ない。追っ手に気づき、自ら囮になっているやもしれん」
グラナードは袋に入った胡桃をカルミアに渡しながら、水筒の水で喉を潤わせた。
「ルスの事を信じて進むしかない。馬は目立ちすぎるからここに置いて行くことにする。オロ、荷を頼む」
オロは二頭の馬から荷を下ろし、必要最低限の食料と水、道具を手早くまとめて背中に負った。
「カルミア、遺跡の入り口までほど近い所に来ている。もう少し頑張れるか」
「もちろんです。……ルスは大丈夫でしょうか……」
カルミアは両手を組んで、大柄なルスのシルエットを思い浮かべる。言葉を交わす事はほとんどなかったが、フードの奥で光る瞳は優しげだった。
「ルスなら大丈夫だ。奴に剣技で敵う者は、アドニスにはいない」
兄の言葉にルスへの並々ならない信頼を見てとり、カルミアは静かに頷いた。兄もまたひとつ頷くと、突然カルミアの前に膝を付いて背中を向ける。
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