504人が本棚に入れています
本棚に追加
***
目を開けると、そこは陽の差し込まない暗い檻の中だった。
――そうだ。私は囚われていたのだ。
冷たい床に横たわっていたためか、身体は冷え切っていて身震いする。もう長いことこのじめじめとした檻の中で過ごしていた。今がいつで、ここがどこかさえも分からない。解放される希望も薄れ、心も身体も酷く疲弊してしまい、まだ夜でもないのに微睡みに勝てなかった。
時折、克明な夢を見ることがあった。ほとんどの夢が自分の事ではなく誰か身近な人の夢であり、それは往々にして正夢になった。
予知する力。それが自分にあることを知っているのは、父と母、そして二つ年上の兄だけだった。
今までみた予知夢は小さな予知も含めれば十を超えるが、その中で大きな出来事の夢は三回。一度目は兄妹で王宮の隠し通路を見つけた時の夢。二度目は父と母が亡くなる時の夢。そして、最近見たものは兄が戴冠する夢だった。
三度見た内、二つはその通りとなった。
そして今。
――あれは、私の事なの…?
最初のコメントを投稿しよう!