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グラナードが促すように顎で合図すると、カルミアは小さく笑って話し始める。
「ヴィグリド大陸に七つの不思議あり。
一つ、アドニスの祖は遥か海を越えて来たる
二つ、遥か南の地に、精霊が住まう深い森
三つ、精霊の国アールヴには空からの落し物
四つ、神々の山を越えるのは鷹の人
五つ、神々の山の向こう側に神の国バナハイム
六つ、神代の時代、鷹が人となり人が鷹となり
七つ、全ての秘密はイアール地下遺跡の中」
言い終えると、グラナードはカルミアの目を覗き込んで少年のような笑顔を浮かべた。
「ヴィグリド大陸は広い。大陸全土をアドニスが治めているなんて奢りでしかない。まだまだ未開の土地があり、わたしたちはそれを探求する義務がある」
グラナードは突然厳しい顔つきになってそう語ると、妹と顔を合わせ同時に吹き出した。何人もいた教師の物真似は、昔から兄の得意芸でもあった。
大陸の歴史と地理の教師は、大きな地図を広げて様々な不思議を話して聞かせた。幼い二人はその話に心躍らせ、はるか未開の地に想いを馳せたのだった。
「カルミアが好きなのは、三と四の不思議だったな」
「ええ。空からの落し物が何なのか、小さい頃から色んな事を空想しました。そして鷹の人。神々の山と謳われるレギン山脈を越える事ができる人間がいたなんて、想像できないけれど、翼持つ人がもしもいたなら、可能なのかもしれない。私も大空を飛んでみたいと、いつも願っていました」
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