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「これでいいですか?」
にこりと笑いながら男が差し出してきたのは壱万円札だった。
俺のことバカにしてるのかこいつは。
「あ?」
「これじゃ足りなければ、また今度でいいですか。」
男はサッと四角いケースを胸ポケットから取りだし、
そこから小さな紙切れを俺に渡した。
「裏に電話番号書いてるんで、何かあれば連絡ください。じゃ、僕はこれで。」
名前と会社名が書かれた紙切れを裏返すと、男が言った通りそこには電話番号がかかれていた。
俺がそれを確認したのを見ると男は少しお辞儀をして振り返った。
ハッとしてコツコツと音をたてて歩く男を急いで追いかける。
「おいまてよ!」
無意識で俺は男の肩に手をおいた。
男は首だけ少し後ろに向け俺を見たかと思うと、サッと俺の手を払った。
「なんですか。」
「てめ、何様のつもりだよ。」
「外ですよ。やめてください。」
冷静に俺を見下す目には光がない。
少し不気味にも感じられた。
「文句があるようなので、その電話番号に改めて御電話くださいね。」
少し笑った男の目は全く笑っていなかった。
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