第1章 大橋 敬太

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探求心旺盛な性格は宇治木に負けじ劣らない俺。 這いつくばり、恐るおそる床下を覗いた。 すると、そこには。 「ッ?」 白い布で覆われた箱。大きさは、ついさっきまで抱えていた物と合致する。 「宇治木さん!」 大声で彼を呼びつけ、箱を引っ張り上げた。 「それって……まさか」 今度は一瞥どころか、ベッドの上を凝視する彼。 「「遺骨?」」 答えが揃い、俺はきつく絞められた結び目をほどく。 「ちょ、敬太君」 「確かめるんですよ!」 赤の他人が勝手に開けるのは不謹慎かもしれない。 だが、骨壺の中を見て確信を得たかった。 ――……。 ひとときの間を置き、意を決して蓋を開ける。 「ッ……磨理子さん」 俺の勘は正しかったようだ。壺の中の遺骨は、新八のそれと比べると一目瞭然に少ない。 すなわち、四肢の無い状態で弔らわれた証。 「磨理子さん゛……」 彼女はここにいた。ずっと、父親の傍に。 また会えたことは嬉しい。 でも、こんな形での再会は哀しい。そんなどっちつかずの複雑な思いで、覆い被さるように抱きしめる。 力の源は次第に憐れみが先行していった。何故なら、この親子には安眠できる場所がまだ見つかっていないから。 あまりに不憫でかつ、己の無力さを痛感する。 だが、俺は泣くことをしなかった。 新八が死んだときや、灰になった姿を見たときもそう。 一番哀しいのは当事者のはず。 嘆き苦しむばかりが残される者のすべきことではない。 大切な者の死を受け入れ、強くなる。それが俺の使命だと深く心に刻んでいた。 その思いが一変することになるのだが。  
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