第3章 大貫 幸恵

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私に対してのいじめはどんどんエスカレートしていった。 特に女子3人組が主で、色々な物がなくなったり壊されたりしたから、新しく買い替える必要があった。 母には相談できず、数回黙って財布からお金を抜く。なんとも不条理な罪悪感だ。 本当は私なりの救難信号だった。気付いてくれたら、助けてほしいと言えたかもしれない。 でも母はお金に関してすごくガサツで、最近はそれが顕著に表れている。 夜のお店で稼いだ給料をすぐに使い果たして、月のある時期なるといつもスーパーの総菜が1品減った。その代わり、洋服や装飾品は増えていく。 こんな金銭感覚だから、私のSOSにまったく気付いてくれなかった。 だが、あの男は違ったはず。 ある日、私はいつものように女子トイレへ連行された。 『なんか今日暑くない?』 そう半笑いで言って個室に閉じこめ、ホースで上から水をかけられる。 『これで脂肪が落とせるかもよ?』 湯之下美佐子の手には掃除で使う筒状の粉洗剤。それをかけられたら、乾かすだけじゃ済まなくなる。 私は渾身の力でドアを開けて、トイレの外に逃げた。 案の定、彼女たちは楽しそうに追いかけてきて、校舎の端の壁で逃げ場を失う私。 そのとき。 『何してんだ!』 担任の畑山がたまたま通りかかる。 3人は絶句して、私は心の中で「助かった」と安堵した。 しかし……。 廊下に点在する水滴から、ずぶ濡れの張本人まで見て、 『ほかの生徒が滑って転んだらどうするんだ! ちゃんとモップで拭き取っとけよ!』 そう言った。 忘れもしない。 その時の3人がニヤッと笑った顔と、畑山が振り返り際に見せた死んだ魚のような流し目を。  
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