第3章 大貫 幸恵

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3年1組の保護者の多くは学校に寄付をしているそうだ。 そのため、クラスに問題があれば、簡単に教師を切ることができる影響力を持っている。 大人の事情というやつで、私を守ってくれるモノはこれでなくなった。 ゴミ箱扱いで紙クズを投げつけられていても、保健室に通うことが多くなってきても、畑山は知らぬ存ぜぬ見て見ぬフリを貫き通した。 こんなのが優秀な教師として評価されているなんて、日本の教育は歪んでいる。 それからも至れり尽くせりのいじめを経験したが、物事を俯瞰で捉えて論理的に考える私は、自らにしょうがないと説き伏せた。 見た目が醜くて、性格が暗いから。 人間はそういう生き物だから。 世の中はこう。 とあきらめたら、怒りや憎しみに行きつかない。 まして、死にたいという感情も一切なかった。 今となっては落ちぶれていても、私を産んで育ててくれた母がいるからだ。 自殺は最大の裏切り。それこそ愚かな人間のすることだと、状況を打破する選択肢にはならなかった。 そこで挙げられたのは、そらに会いに行くという選択肢。 彼女に勇気をもらえたら、何かを変えられるかもしれない。 本気で考えたが、その度に「恐い」という思いに苛まれた。 拒絶されたらどうしよう。 『誰?』 なんて言われるかもしれない。 最終的に、こう自己完結。 『筆箱壊れちゃったし……』 もし会えて、 『あの筆箱、まだ大事に使ってくれてる?』 と明るく言われたら、返す言葉がないから。 八方塞がりだった。 このまま独りで耐えるしかない。  
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