第3章 大貫 幸恵

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それから赤い痕や青いアザがいくつかできたけれど、すべて制服の内側に隠れる部分。 アイツらは細心の注意を払い、私を痛めつけるのだ。 ずる賢いというか、人を地獄に蹴落とすプロだった。 ある日の休み時間。いつものふたりに屋上で雑なプロレス技をかけられていた時、生徒会長の内山くんが助けに来てくれたことがある。 『キ、キミたち! ぉ大貫さんは日本の宝になるひ、人なんだぞ! いい加減にしたまえッ!』 精一杯勇気を振り絞ってくれたんだと思う。手が震えていたから。 すると、一瞬目を細くしたあの女は彼にすり寄り、 『わかったわ、ごめんなさい! あなた勇気があるのね……ステキ。放課後…』 そこから後は耳元で囁く。 次の日。 内山くんは公立中へ転校することになった。 噂だと、彼があの女をレイプしようとしたらしい。 ウソだ。罠に決まっている。 担任は役に立たないから、一番偉い学年主任に必死で訴えた。 初めて私に対するいじめを止めに来てくれた内山くんを、犠牲にするわけにはいかない。 しかし、 『制服が破けてたんだよ……ショックで学校にも来れないって。見過ごせるわけがないだろ? それに、ただ屋上でふざけてただけなんじゃないのか?』 所詮、金のなる木を伐りたくないだけ。 私は愕然とした。どいつもこいつもクズすぎて。 『いいんだ。ずっと見て見ぬフリした罰だよ。僕は後悔してないから』 家まで謝りに行ったとき、引っ越し業者が後ろで行き交う中、内山くんは私にそう言った。 まざまざと思い知る。世の中は金。 それ次第で、ウソもマコトになるんだと。 自分にも人にも、この時だって何もしてあげられなかった。 私は無力の塊だ。  
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