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それから赤い痕や青いアザがいくつかできたけれど、すべて制服の内側に隠れる部分。
アイツらは細心の注意を払い、私を痛めつけるのだ。
ずる賢いというか、人を地獄に蹴落とすプロだった。
ある日の休み時間。いつものふたりに屋上で雑なプロレス技をかけられていた時、生徒会長の内山くんが助けに来てくれたことがある。
『キ、キミたち! ぉ大貫さんは日本の宝になるひ、人なんだぞ! いい加減にしたまえッ!』
精一杯勇気を振り絞ってくれたんだと思う。手が震えていたから。
すると、一瞬目を細くしたあの女は彼にすり寄り、
『わかったわ、ごめんなさい! あなた勇気があるのね……ステキ。放課後…』
そこから後は耳元で囁く。
次の日。
内山くんは公立中へ転校することになった。
噂だと、彼があの女をレイプしようとしたらしい。
ウソだ。罠に決まっている。
担任は役に立たないから、一番偉い学年主任に必死で訴えた。
初めて私に対するいじめを止めに来てくれた内山くんを、犠牲にするわけにはいかない。
しかし、
『制服が破けてたんだよ……ショックで学校にも来れないって。見過ごせるわけがないだろ? それに、ただ屋上でふざけてただけなんじゃないのか?』
所詮、金のなる木を伐りたくないだけ。
私は愕然とした。どいつもこいつもクズすぎて。
『いいんだ。ずっと見て見ぬフリした罰だよ。僕は後悔してないから』
家まで謝りに行ったとき、引っ越し業者が後ろで行き交う中、内山くんは私にそう言った。
まざまざと思い知る。世の中は金。
それ次第で、ウソもマコトになるんだと。
自分にも人にも、この時だって何もしてあげられなかった。
私は無力の塊だ。
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