第3章 大貫 幸恵

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冬休み前の第3次進路希望。 大詰めの段階だが、これも白紙で提出した。 担任との面談は通常親も同席するが、言わなくてもわかるだろう。 教室のドアを閉めきって、独特な空気に包まれた途端、畑山は焦って饒舌になる。 『まぁキミはどこにでも進学できるんだから心配ないんだけどねでも一応一応ね書いてくれないと困るなあ~ぉ親御さんは何か言ってないのかな?選び放題なんだしキミにも行ってみたい高校のひとつやふたつあるだろ?』 言ってやった。 『3年1組から誰ひとり進学しない高校が私の希望です』 数秒の沈黙の間に、畑山の額には大量の汗が噴きだしはじめる。 どうして私がこんなことを言うのか、その理由をよくわかっている証拠。 『そ、そうか……偏差値の高い順番からリストを作っておくよ』 『よろしくお願いします』 椅子から立ち上がって、わざと深々頭を下げた。 気まずそうに、一度も目を合わせないでやんの。 人を睨みつけたのはこの日が初めてだった気がする。 1年の内の3分の2が終えると、ここから先はもう意地。 そして、次の春も同じ目に遭わないようにと、人知れずダイエットをはじめる。 甘い物を食べるクリスマスや、たくさんのご馳走が並ぶ正月とは無縁になったから、それも後押しになった。 でも、お年玉がなくなったのはさすがにショックだ。 最近母は、静岡によく行く。冬休みもほとんどあっちにいた。 きっと、その費用に充てられた。 普通は親戚が集ったり、家を巡ったりするのが新年の慣習なはず。 そんなの生まれてこの方一度も無い。 母はよほど親戚一同に嫌われているのだろう。  
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