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3学期。都心が記録的な大雪に見舞われた日だった。
誰も外に出ようとはしない2限目の休み時間、あのふたりがハシャギながら私を外に連れだす。
校舎裏の大きな木の下で、湯之下美佐子がテンション高めに言う。
『ダルマさんが転んだをやろう! あんた鬼ね!』
続けて、梅田はるか。
『わかってんな? 逃げんなよ!』
その脅しと、始めるまでに何度も待ったをかけるから、なんとなく予想できた。
『いいよー!』
『……ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・ン・ダ』
どうせ雪玉をぶつけてくるんだろうと振り向いた、瞬間。
『イ゛!』
顔に真っ白な電流が流れ、とっさに手で覆う。
『ッッッ゛……』
一気に血で染まり、下へポタポタと落ちた。
鼻血だ。数滴は雪の上、一滴が石ころの上に。
『っ゛う゛……』
甘かった。雪玉の中に石を詰めている。
『クスクスッ。だから、顔はやめなってば!』
『ヘヘッ、ごめんごめん。あたしコントロール悪いね』
『続けなよ! ほら。ほら!』
『…………』
『は? シカト?! せっかく遊んであげてるのに』
『早くしろよ!!』
満足するか飽きるまでは終わらない。
それを知っているから、再び木に手をかざす。
『だ・る・ま・さ・ん・が・こ・ろ・ん・だ』
今度は歯を食いしばって振り返った。
『痛゛いッ!!』
『『キャハハハハッ』』
どちらかが投げた雪玉が腰に命中し、身体を駆け巡る激痛。
『また当たった!』
『いやいや、私のでしょ?』
『……も゛ぅゃめて』
『うるさい! はい、次!』
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