72人が本棚に入れています
本棚に追加
結局、母は退院するまでの1週間、一度も見舞いに来なかった。
反応次第では進学をやめようと決意して、あの紙を渡す。
『まだ決めてないんだ……どこがいいと思う?』
こんな親でも、養われていることに変わりはないから。
すると、
『あら、そうなの? じゃ静岡の焼津に引っ越しましょ!』
半ば興奮気味に言う。
訊けば、今の恋人は漁師らしく、そこが地元。彼の近くに居たいという身勝手な理由だった。
だけどよくよく考えてみたら、私にとっても好都合。
『じゃ、静岡の高校を受けるよ。いい?』
『えぇ! でも、お金ないから公立にして』
その心配には及ばない。
開桜中側はどの高校でも特待生の席を用意すると言っていたから。
試験が免除され、面接に臨んだが、
『なぜキミのような子が我が校に?』
などと、まるで接待。
卒業式を待たぬまま、私たち親子はひっそりと静岡に転居する。
悪夢の日々がこれで終わった。そう思っていた。
しかし、現実は地獄の入口に立っただけ。
信じがたい秘密と粉々に砕かれた自尊心が、私を地獄の果てへと誘う。
そこで生まれた。出会ってしまったのだ。
【復讐】という信念に。伊達磨理子という存在に。
高校2年の冬。
私は死ぬことを選んだ。
もしも、これから死のうとしている人が居るならば聞いてほしい。
あなたは今、特別な権利を持っていると。
「死ぬ気でやる!」
「死に物狂いでがんばる!!」
なんて簡単に言うヤツがいる。
だけどそれは、一度でも自ら命を断とうとした者だけが持てる特権。
その瞬間のことを思い出したら、生きていくのに邪魔をするプライドや恥なんて、とてもちっぽけに思えて乗り越えられるはず。
これが私の生き方。この言葉があなたの心で生き続けたなら、私は死んだことにはならない。
そう信じている。
では、さようならーー。
最初のコメントを投稿しよう!