第4章 水嶋 辰巳

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まだ全貌は見えない。 「ハァ……ハァ……」 ゆっくり、一歩また一歩。 「ハァ……ン゛ッ……」 冷たく乾いた空気が喉につっかえても、さらに一歩。 また一歩。 そして、ようやく明かりの圏内に入った。 瞬間!!!! 「キヤ゛ァ゛ーーーーーッ!!」 一帯に轟く、彩矢香の悲鳴。 「ミ゛……ミサコ?!」 急襲する氷点下の絶望は秒速で凍りつかせた。 救いたい、という思いを……。 「ミサコッ゛!」 青白い肌に黒い涙を流す彼女の生首が、2つの玉の上にポツンと置かれ、手足は切断されて、木の枝を模したように突っ立つ。 それは、真っ赤に染まった人間雪ダルマ。 悲愴と血の臭い漂う変わり果てた姿だった。 「う゛ぅ!」 むごい。むごたらしい。 身体の内側から込みあがる震えに、僕はえづく。 彩矢香にいたっては、その場にへたりこんでうつむいたまま。 故に、おそらく見ていないだろう。 無惨な亡骸となった美佐子の傍らにそびえる木。 その幹に記された 【イジメの末路】 という血文字のメッセージを。 「くッそ……」 悔しい。 終わらせる方法にたどり着いていながら、彼女を死なせてしまった。 その現実から目を背けたくて、僕は瞼を閉じて唱えてみる。 幸せだったあの瞬間に。目覚めればそこに彩矢香の美しい寝顔があった、あの時間に。 戻れ、とーー。  
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