第4章 水嶋 辰巳

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車に乗ると、彩矢香はまず携帯を接続し、誰かに電話をかける。 『もしもーし』 出たのは美佐子だった。やけに明るく感じるのは、車内に大音量で響いているからか。 『何してんだ、今』 『ぁ、タツミ? いま化粧中! 群馬、どうだった?』 少し早く着きそうだから会って話せるか、と尋ねたが、 『ごめーん! これから美容室で、そのあと同伴なの』 なんて、危機感がまるで感じられないふざけた答えが返ってくる。 僕らは、一度家に帰るのも面倒だと、そのまま美佐子が働く店のある池袋に向かうことを決めた。 『じゃ、上がったら連絡するね!』 遊ぶ約束でもしているかのようなテンションで通話を切られ、僕らは鼻で笑いながら顔を見合わせる。 「相変わらずだな」 「……だね」 こちとら楽しい話で盛り上がれる心持ちもなく、僕はふと、コートの内ポケットから“あれ”を取りだす。 『あなたたちの周りでこの人を見かけたらすぐに報せて!』 帰り際に息もつかぬ言葉で、沙奈から渡された大橋敬太の写真だ。 冴野将輝=大橋敬太=謎の失踪 彼は何故に愛する家族を残して消え、磨理子が再び甦ったのか。 「何を考えてるの?」 今なら本心を言える。 「ん……この人、もう死んでるんじゃないかな」 「どうして?」 これが、最もつじつまが合う。 「この人がいたから、伊達磨理子は消えた。ってことは、この人がいなくなったから……」 「伊達磨理子が再び現れた?」 そう考えるのが妥当だ。  
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