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『タツミ!? まさか、ミサコも死んだのか?!』
まずは、僕が死の知らせを届ける死神ではないと冷静に諭す。
そのあとで、電話の目的を悟られないように遂行した。
正直僕は、はるかを連れ去った3人組のひとりが山口ではないかと疑ってならない。
一夜ごとに近づく死の恐怖に戦々恐々としているのも迫真の演技だとしたら、僕らが尾行に気付かなかったのも頷ける。
さらには、どうしても気になっていた。
山口は大貫に何をしたのか。問いつめたあの時、尋常じゃない汗を拭っていた理由が。
『タツミ……お前は昔から口が堅かったよな?』
『それ、自分で言うヤツが一番危ないだろ!』
『フッ。まぁ、そうだな』
男同士の電話は秘密の紐も緩くなるらしく、今にも吐露しそうな予感。
『今、ひとりだよな?』
『いいや。彩矢香と一緒にいるけど』
しかし、彼女の名前を出すと流れが一変。
『彩矢香?! だめだ、ダメ! 話せない!!』
山口は態度を翻し、頑なに拒否しはじめた。
そのくせ、
『代わってくれ!』
と乞う。
もう訳がわからない。
「グッさんが代わってくれって。はい」
僕は彩矢香に携帯を渡し、表情を見ていた。
『うん。そうだね。……何? え、どうして? だから、もう死んでるって! ……ぅん、わかった』
通話を切った彼女は、浮かない顔で僕に携帯を返す。
「なんて?」
「……うん。海外に逃げたいから、協力してくれって」
「海外? どうして?」
「あいつは生きてて、絶対に自分を殺しに来る。だから遠くに逃げたいんだって」
「あいつって、大貫のこと?」
「そう」
ちゃんと説明はした。今夜で呪いは終わらせられる、と。
そもそもそれ自体、伊達磨理子によるものだとも。
だが山口は未だ大貫の亡霊に怯えている。
結局何をしたのかは訊きだせなかったが、よほどのことをしたんだというのはよくわかった。
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