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そこまで怯えられると、なにやら僕のほうまで大貫は生きているんじゃないかと思いはじめていた。
警察に事実誤認があるのではないかと。
しかし、僕らは知らない。
彼女がどの高校に進学し、どこで暮らしていたのか。
調べる術は1つだけあるが、もうあの声には触れたくなかった。
「はーぁ……」
ため息がつい漏れ出る。
闇夜、行き止まりの壁ばかりがある迷路の中にいるみたいだった。
「ねえ。思ったんだけど、あの携帯を浜田さん達に渡さない?」
この彩矢香の言葉に僕はひらめき、ため息を吸い戻す。
「それな! 警察なら契約者を調べられる」
どうしてこんな簡単なことに気付かなかったのか。
必ず見つけだしてやる!と息巻いていた自分が、今となっては恥ずかしい。
僕はすぐに電話をかけた。
事の次第を話しながら、追加の注文を運んできた店員の顔を見る。
どこか冷たいその視線は、僕のことを、電話ばかりしている最低な彼氏と思っているのだろう。
「えっとね……明日は静岡に聞き込みだから、明後日なら受け取れる。それか、明日署に届けてくれたら」
浜田ではなく、斎藤にした。彼のほうが歳も近いし、話しやすい。
「じゃ、明日届けます!」
今夜、旧友の連続不審死に終止符を打ち、明日、それに関わった者が判明する。
これからの行動計画にメドがつき、やっと彩矢香との時間を心おきなく楽しめた。
気付けば1時を回り、飲み物を勧める店員の姿もない。
そろそろ美佐子から連絡が来るはずだ。
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