第4章 水嶋 辰巳

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どうやら店を閉める前に客が入ってきたらしく、終わったのは予想よりも大幅に遅れた2時半前。 少しでも身体を揺らしていないと凍りそうな寒空の下、僕らは美佐子を待っていた。 「ごめーん! 酔っ払いがなかなか帰ってくれなくて」 申し訳なさそうに謝る彼女の手には、大量のコスチュームが詰まった紙袋。 「何だよ、それ?」 「うん。あのね」 今日は【コスプレナイト】と銘打ったイベントだったらしい。 「で、その酔っ払いが席を立った時によろけてさ、グラスが倒れて私のセーラー服に赤ワインがかかったの!」 閉店後の更衣室で、これからコインランドリーに行ってすぐに洗うと告げた結果……。 「これよ!」 以上、気になった点はひとつだけだ。 「え。コインランドリーって、僕らも?」 「サ~ヤー、おねがーい」 僕の許可は二の次。しかし彩矢香は二つ返事で、 「全然いいよ!」 と、3人で車を停めてあるコインパーキングに向かう。 「何をそんなにキョロキョロしてるの? 田舎から出てきた人みたいだよ」 美佐子はひとり後ろを歩く僕の様子をそう言った。 「誰かに尾行されてるかもしれないからね!」 なんて言えるわけもなく、 「いやー、雪が降る池袋もロマンチックだなと思ってさ」 「……キモっ!」 で、解決。 車の下を覗きこみ、例の携帯がまだあることを確認したときも、 「なんか、今日のタツミ変じゃない?」 と、彩矢香に同意を求める美佐子。 「そ、そうかな……」 知る由もない。彼女は僕の味方。 運命共同体と言っても過言ではないぐらいだ。  
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