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閉鎖的な空間は、時を余計感じさせる。
気分が高まる音楽に切り替え、ボリュームも上げ、午前3時からの戦慄を思い出させないように努める彩矢香。
さすがの美佐子も言葉少なめだ。
「でもさ、車の中って安全じゃない? すぐ逃げられるし……ほほら、鏡もある!」
彼女はフロントミラーを指さし、鏡越しに笑って見せた。
その顔が引きつっていることは黙っておこう。
12月19日 火曜日 AM3:00
洗濯機が稼働を終えるまで、あと18分。
そして、あの時間まであと3分。
AM3:01
たしかに美佐子が言ったことには一理あって、そんなに恐れはない。
煌々と明かりに照らされているし、狭い閉鎖的空間に3人もいる。
不思議だが、僕らとは関係のない人物が視界にいることもその一端。
AM3:02
「また寝てる。あのオジさん、かわいそうだね……」
彩矢香の慈悲と僕の感覚は、どうやらシンクロしているようだ。
そして??。
AM3:03
「「「…………」」」
全速力で走りだす脈拍。
「「「…………」」」
荒々しく波打つ鼓動が耳から抜ける。
ーー……。
息は上がるが、息を呑むジレンマ。
「「「…………」」」
誰も言葉を発しない。
殺伐とした僕たちとは裏腹に、快調なバックグラウンドミュージック。
AM3:04
ついに、美佐子が口を開いた。
「ほら! なーんにも起こらない!」
「……た、たしかに」
「ほんとだね……」
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