第4章 水嶋 辰巳

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僕と彩矢香の奔走は骨折り損だったのか。 数分を過ぎても、周囲に何の変化も起こらない。 意気が様変わりしたのはやはり今夜の鬼である美佐子で、僕らに恨み節さえぶつける揚々ぶり。 「さんざん脅してくれたよね~。やっぱり呪いなんかあるわけないんだよ! 3人が続けて死んだのも、た・ま・た・ま」 「「…………」」 何はともあれ、喜ぶべきこと。 もう、夜が来るたびに怯えなくていいのだから。 「そろそろだ」 美佐子は待ちかねたように紙袋を持って外に出た。 「お、おい!」 まだ3時18分。油断も甚だしく、約束したことをすでに忘れている。 彼女のバックから鏡を抜き取り、後に続く。 「ミサコ、これ!」 僕の呼びかけを横目に見ながら蓋を開けた。 「え? もう必要…」 次の瞬間!! 「キャアアアアアアア゛ァーーーッ゛!」 膝が砕けたように後ろへ倒れる美佐子。 そして、 ??バチンッ。 あれほど明るかった照明が消えた。 甲高い悲鳴で、すっかり寝入ったホームレスも起き上がり、環境の変化に戸惑う。 「どうした?!」 僕は美佐子の肩を抱き、顔を覗く。 「な゛……」 美しさとはかけ離れた表情が、至高の恐怖を表していた。 「ぁ、あ゛、あれ……」 震えている身体とは違い、固まったままの視線。 僕もその先を追うと、 「ッわ゛!!」 ドラム槽からこちらを見据える生首を見た。 驚いた拍子に、持っていた鏡が派手に床を転がる。 「兄ちゃんたちどうした!?」 この戦慄は、見えないほうが幸せだ。  
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