第1章 大橋 敬太

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「午後4時48分……」 臨終を告げた主治医は、一定の機械音を鳴らす装置の電源を落として病室を出て行く。 阿吽の呼吸で、看護師たちはそそくさと行動を始めた。 床に膝をついてむせび泣く沙奈。そのか細い肩を抱き寄せていると、 「敬太くん!!」 病室の入口から声がして、俺はとっさに振り返る。 「宇治木さん」 そこには、白いワイシャツがしっちゃかめっちゃかな彼。 魂が旅立ったばかりの新八を見るなり、大きなため息を吐いてこう言った。 「クソッ、間に合わなかったか……」 ひどくうなだれ、ジャケットを手に持ったままで壁に拳を叩きつける。 ほどなくして、新八の遺体は3人がかりでストレッチャーに乗せられた。 邪魔にならぬよう、俺は沙奈を立たせ、病室の外にある長椅子に座らせる。 ――……。 ふたりの様子をそっと見守っていたら、次第に冷静と哀しみの均衡が保たれていく。 もし俺まで哀しみに押し潰されたら、絶望の三つ巴。せめて俺だけは強くあるべきだと思った。 「20分ほどお待ちいただけますか?」 顔色を窺がうように尋ねる看護師。これから遺体を霊安室に運ぶと言う。 夜明け前で、閑散たる長い廊下に鳴り響く車輪の音。 4つあるうちの1つが不具合なのか、前に進みながらもクルクルと回っていた。 俺たち3人は時間差で地下1階へ。エレベーターの扉が開くと、カゴの中へ一気にひんやりとした空気が流れ込む。  
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