第1章 大橋 敬太

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優しく助言をくれるその女性は、俺たちとそう歳は変わらなく見えたが、仕事柄か冷静で気丈。 俺は少し震える手でおもむろに、肋骨の一部を拾い上げた。 隣にいる沙奈に渡さなければならないが、ふいに箸が止まってしまう。 「どうしたの?」 彼女は心配して、俺の顔を覗きこむ。 「想像してしまったんだ。もしも親が死んだら……って」 「……そうね。こういう悲しさには慣れたくないな」 拾い手が少なく、収骨には時間を要した。 「行こうか……」 宇治木は壺を木箱に入れ、大きな骨覆で結ったあとに言う。 扉を開けたまま、深々と頭を下げて送りだす女性スタッフ。 先程までは気丈に応対していたのに、鼻を何度もすすり、手袋で涙を拭っていた。 火葬場を出た直後、 「このまま病院に行く?」 と、俺たちに判断を任せる宇治木。 沙奈はやはり、君江に会いに行くことを拒んだ。 彼女の自宅前で降ろすと、三度目の催促。 「本当に行かないの?」 「……はい。少し体調が悪いので」 それで宇治木はようやく諦め、車を発進させた。 高速で駆け抜ける景色を眺めながら、ふと思う。 新八の遺骨は兵藤家の墓に納めることを拒否されたが、そうなると娘である磨理子の遺骨は、一体今どこにあるのか。 もしも君江が隠し持っているとしたら……。 「寒い? 窓、閉めようか?」 「いいえ。大丈夫です」 ただただゾッとする。    
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