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「史也が己に倅を寄越したから好きにさせてもらうことにした。幸いにも、史也が倅を切った時に血がしめ縄に飛び散り、封印の力は非常に弱まったのでな、そのまま倅、おぬしを連れて谷塚の地より山5つ分ほど離れたこの場所まで逃げてきたということだ。ずっと思うように動けなんだから良い鍛錬になった」
オニは大声を出すのをこらえるように笑った。
「どうして、俺を助けたんだ?」
隼瀬は思ったことを口にした。
「簡単なこと。己はあまり長い時間この姿でおれん。そのために、おぬしの体を必要としたまでだ。封印された時、己の体は分断され別のところに封じられ、今手元にあるは右腕のみ。まったくもって力があまり使えん。そこでだ、おぬしに己の体を取り戻してもらう。中々、その場での思い付きだったが、良い案だろう」
オニは決定事項のように言い切った。
「ちょっと待て。俺が協力するとは言っていないだろ」
隼瀬は不満を込めて言った。
「倅、これは協力ではなく、命令だ。すでにおぬしと己との間には契約が交わされておる。おぬしを助けるときに、己の力を使って助けた。オニに助けられた人間は、それと同等の何かを差し出す必要がある。
おぬしは史也に切られたことで命を失いかけておったのを、己が助けた。ならばおぬしが己に差し出せるのは、命の他あるまいよ。だが、それでは助けた意味がなくなるからな、代わりにおぬしには己の願いを叶えてもらうためにその身をもって働いてもらうしかない」
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