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佐夜子ははい、と言って背筋を伸ばすと、隼瀬の目を見た。使用人としてではなく、祓い屋の師匠としての目になった。
「『才能がない』といつも弱音を吐いて、お役目から泣いて逃げていた弟子が、ここまで無事に成長できたことを私は誇りに思います。ですが、驕りは身を滅ぼします。そのことを、決して忘れないように」
佐夜子は力強く言う。
「師匠、ありがとうございました」
隼瀬は見送る佐夜子を後にして、扉を開けると屋敷の地下牢に続く階段を下りていく。
谷塚家は数百年も昔から『祓い屋』として人に悪さをするモノ、世に害を為すモノ、人の目には視えないモノなど、いろいろなモノを祓ってきた一族だ。祓い屋として働いている隼瀬も、何度もそういったモノを祓ってきた。そしてこの家の奥深くにある地下牢には、あるモノが封印されている。
「『谷塚家の地下深くに封印されたオニ』か。そのオニから溢れ出ている邪気を祓うことが、当主になるために必要なお役目。このお役目を果たせれば、俺は認められるんだ」
一族の大人だけが知っている谷塚家の秘密。隼瀬は封印されたオニがどのような姿をしていて、なぜ封印されたのかは知らない。父上に訊いてみたが
「成人の儀としてオニと出会ったとき、知ることができる。二度とこのことについて触れるな」
と怒気を込めて言われてしまい、知ろうにも知ることができなかった。
隼瀬は壁に取り付けられた僅かな明かりを頼りに階段を下りていく。一段ごとに空気が冷たくなっていくような気がする。それはオニに近づいているからか、それとも――
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