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「いや、余計なことを考えてはだめだ。独りでお役目を果たせなくてどうする」
やがて階段を下りきると地面が岩のようにごつごつとしたものに変わった。隼瀬は周りを見渡す。壁も岩だ。
「まるで洞窟のようだ」
ひゅう、と正面から風が吹いた。隼瀬は真っすぐ前を見る。その先は先ほどよりも明かりの数が少なく、薄暗い空間が続いていた。
「この先に、オニがいるのか・・・」
ごくりと唾を飲み込むと、隼瀬はゆっくりと歩き出す。
薄暗い中を進むと、しめ縄が幾重にもかけられた空間にたどり着いた。
「ここか」
しめ縄の先は暗い。けれどそこには何かがいると思わせる空気の流れと、重苦しい気配がある。
「そこに在るのは誰か?」
ビクッと隼瀬の体ははねた。
しめ縄の向こうから人の声が聞こえてきた。
「在るのはわかっている。誰か?」
声は再び訊いてきた。隼瀬は声を出そうとしたが、震えてうまく声が出ない。
「童でも迷い込んだか。どれ、喰ってやろうか」
足音が大きくなり、オニはしめ縄の向こう側までやってきた。隼瀬は奥歯を噛みしめ、足を踏ん張って身構える。
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