祓い屋の話

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 向こう側に現れたオニはどこにでもいそうな青年だった。長い黒髪に白と赤の着流しを着ており、体つきも特別に筋肉が盛り上がっているというわけでもない。とてもオニには見えず、そのあたりを歩いていても誰もオニとは気づかないほど、ただの人間に見える。唯一違うというところを上げるとするなら、瞳の色が金色だというところだけだ。 「童ではないのか。なら、喰えないな」  オニは隼瀬を見ながら残念そうにつぶやいた。 「あ、あんたが封じられたオニか?」  隼瀬はようやく声を絞り出した。 「何だ、まさかと思うが、お前のような臆病者が谷塚の当主候補だとでもいうのか」  オニは震えている隼瀬を見て、あきれたように言った。 「史也はおらんのか。久方ぶりに酒でも恵んでくれるのかと思うたのに」 「ち、父上を知っているのか」 「父上・・・お前は史也の倅か。ふん、お前のような奴が谷塚家の当主候補になるとは、世の中もずいぶん平和になったものだ」 「何を――」 「人の姿に化けた己を見てこの様では、当主の器が知れたことよ。いっそ今すぐにでもこの封印を破って喰らうてやろうか」  オニの鋭い眼光が隼瀬に突き刺さる。重い威圧感に押しつぶされそうになるが、隼瀬は拳を握りしめてオニを睨み返した。
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