祓い屋の話

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『なら、これで』  隼瀬は持っている小刀に気を込める。そしてそのまま手近にいた影を切り裂いた。 「きいいいぃぃ!」  影はさっきと同じように裂けて再び元に戻ったが、違ったのは切った影から若い女性の悲鳴がしたのだ。 「女の、悲鳴だと?なぜ封印されているオニから溢れた邪気から女の声が・・・」  隼瀬は襲い掛かってくる影を切り裂きながら、オニのことを考えていた。 『この邪気はそもそも、このオニのものなのか?』 「さあ、早くそれを祓え。それを祓えたら、当主になることを認めてやってもよいぞ」  オニはしめ縄の向こう側からずっと隼瀬を見定めるように見ていた。 『この邪気はおそらく――』  隼瀬はオニの様子を見てひとつの答えを導いた。  影が再び隼瀬に襲い掛かって来た。隼瀬は和紙で作られたヒトガタを取り出すと、ふっと息を吹きかける。するとヒトガタはしめ縄の向こうにいるオニの姿に変わった。影は隼瀬に襲い掛かるのをやめ、オニの姿になったヒトガタにまとわりついた。隼瀬はその様子を黙って見続ける。ヒトガタにまとわりついていた影は、しばらくするとヒトガタと共に消えた。影がいなくなったことで、隼瀬はほっと肩の力を抜いた。
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