1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ほう、倅はそのように祓ったか。なぜそのような方法で祓ったか?」
オニは隼瀬に訊いた。隼瀬はオニと目を合わせる。オニからは相変わらず威圧感があり、隼瀬はできるだけ虚勢を張って答える。
「俺は最初父上から『オニから溢れた邪気を祓え』と言われて来た。けれど、ここに来てあんたの様子や襲ってきた影を見て、あんたから溢れた邪気じゃないと判断した。この邪気はあんたに対する女の執着心のようなものを感じた。ならばその女が満足できるようにしてやれば、それで十分だ」
「そのためのヒトガタか。アレは定期的に己の周りにやってくる。こちらからはどうすることも出来ず、面倒だったのだ。それにしても、倅はずいぶん甘い。果たしてそれで祓い屋などやってゆけるのか?史也も昔あの邪気を祓ったが、力づくで祓いおったぞ」
「俺は父上のように強くないし、正直あんたのことを怖いと思っている臆病者だ。それに、あんたのようなオニや、人に悪さをするモノたちにも、何かそうさせている理由があるんだろ。祓わずにすむなら、俺はあまり理由もなく祓いたくない」
隼瀬は正直に答える。不思議と自分の思っていることを怖がらずに話せた。
「ふん、倅はそれでよくここまで生きてこられたものだ。そのような当主が居っても、面白いかもしれん」
オニは呆れた表情で言ったが、先ほどまであった威圧感はそれほど感じなくなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!