第1章

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ある日の事、仲睦まじい筈の両親が激しい喧嘩をしていた。 僕は、両親の怒鳴り声で目が覚めたのである。 「うるさいなあ。お前は。しつこいぞ」 父はかなりブチ切れていた。 僕の父は、とある中小企業の社長をしている。 僕の祖父から受け継いだ会社であり、それを更にオートメ化し、拡大したのだ。 電子機器の製造がメインだった。 「だから、誤魔化しても駄目よ。貴方の浮気癖は一生直らないわね。本当に、信じられない。私を馬鹿にしてるのね」 母は真面目な性格で、所謂、良妻賢母なのだが、束縛が強い。 父の帰りをどんなに遅くても起きて待つ様なタイプだ。 父の事を始終管理し、チェックしている。 僕が見ていても、かなりしんどい相手だ。 それを「愛情」と言うのだが、むしろ、ほとんど「呪縛」に近い。 父は、いつも、毎日必死で働いて、あまり寄り道もせずに帰ってきているようだ。
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