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今思えば、そんなことしなければよかったのに、と思わずにはいられない。
ただ、いつだって正しい判断をできる人間なんているはずもない――そんな言い訳くらい聞いてくれたっていいんじゃないか?
結果として、俺の目論見は成功した。
俺が部屋を出ている時間帯――5時から17時までの住人であるシェア相手は大家に見つかることなく手紙を俺に寄越してくれた。
『こんにちは
そうなんですね、初めて知りました
見つからずに届いたらお返事ください』
どちらかというと拙い部類に入る――俺だって人のことは言えないが――、でも可愛らしさも感じる丸文字で書かれたそんな言葉は、俺の心を少しだけ満たした。
だけど、少しだけ。
半端に満たされた感覚を味わった分、また別の欲求が湧き上がるのを感じた。
たぶん、この部屋に住んでいるもう1人は女の子なのだろう。
どんな娘だろう、可愛ければ嬉しいが、う~ん……
「いや、何考えてんだ、俺……」
別に誰が住んでようが関係ないだろ、この手紙の主がいる時間帯、ここは俺の部屋じゃないし、このアパート自体俺には関係のない場所になるのだから。
その日、俺はろくに寝ることもしないままで彼女への返事を考えていた。浮かれきった、よく回りもしない頭で。
たぶん思ってもみなかったんだ。
その先に何が待っていたかなんて。
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