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「……というわけで、また新しい入居者の方がいらっしゃるので、一応その説明を――って、聞いてますかね?」
「……え、ぁ、はい。新しい人がこの部屋に来るんですよね、聞いてましたよ?」
「あ、そうですか」
「どんな方なんです?」
「あー、まぁいかにも若者というか、まぁ若さに溢れた青年という感じですね。この部屋の条件にも二つ返事で了承してもらえたし、凄いですよね」
「へぇ、楽しみですね」
「う~む、あの子も急にいなくなってしまいましたからなぁ」
「どうしたんでしょうね、せっかくやり取りとかできて楽しかったのに」
「やり取り?」
「いえ、こっちの話ですよ、大家さん」
「……? まぁ、わかりました。では金澤さん、お部屋の日程等、また手塚くんのときみたくお願いしますね」
「はい♪」
楽しげに微笑みながら、光莉は階下へ降りる大家を見送る。そして、妖艶な吐息を漏らして舌舐めずりした。
食欲、睡眠欲、性欲。
生物の本能ともいえる一次的欲求。
「お腹が空くのは、仕方ないもんね……?」
最期を迎えた彼らの、恐怖と恍惚が入り雑じった顔。それらひとつひとつが、光莉の宝物だ。それがまたひとつ増えるだろう予感に、彼女はその口元を三日月のように歪めた。
In einem ZImmer , noch liebt sie Kasen.
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