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今日は特別な日だ。
そう、俺が書いた小説を応募する日だ。
もちろん、応募するだけで結果を知るのはもっと先になる。
もしかしたら俺の小説が書籍化するかもしれない。その第一歩が今日なのだ。
書籍化なんて夢であって予選落ちかもしれない。
それでも俺にとっては特別な日なんだ。
初めて作った小説を誰かに読んでもらうことがこんなにも緊張するとは。
緊張するのも仕方がない。読んでもらうのがプロの審査員なのだから。
俺は手の汗を握りエンターキーを押した。
『ご応募ありがとうございます』
パソコンにその文字が映し出された瞬間より一層ドキドキした。
もう後戻りはできない。
それと同時に不安が膨れ上がった。
あー誤字とかなかったかな。変な文章になってないかな。
もっと見直ししておけばよかった。
俺が今回応募したレーベルは小説書いを牛耳っている大手なわけで、おそらく何をしても不安が消えることはないだろう。
でもこの不安もドキドキも初回限定なんだ。
当然、今回がダメで次に応募するときもきっと緊張するだろうが今ほどではないだろう。
この気持ちは忘れないようにと俺は今の自分の心境を文に残した。
『やばい。ドキドキがやばい。緊張もするし不安もあるし』
うん。緊張しているせいか、ろくな文章も書けないぞ。
仕方ない。スマホで今の自分を記録しよう。
カメラを開き自分の姿を映し録画した。
『えー、応募期間最終日に応募しました。正直絶対に無理だろうなって気持ちしかないです。でも、小説を作ってるときはすごく楽しかったし、そのことを思い出すと後悔はありません。これを見ているとき。もしかしたらダメだったかもしれないけど、諦めるな!自分が面白いと思ったことをただ形にすればいいぞ!…………こんなもんでいいかな』
ここで動画は終わっている。
「ふふ、懐かしいな」
今の俺は無事『小説家』になることが出来た。
正直、小説家の中ではまだまだ下の方だが無事に夢を叶えることのできた俺は初めて小説を応募した日のことを思い出していた。
あの日俺が小説を応募しなければ俺は小説家にはなれなかっただろう。
俺にとって間違いなくあの日は特別な日で二度と訪れることがない。
味わうことのできない特別な日。
今でも忘れない。
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