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今日は特別な日だ。
いつも通りに目覚め、綺麗に整えられた布団から抜け出す。
普段なら寝起きすぐに点けるパソコンも、今日はお預けだ。
不思議とお腹は空いてない。何かを食べる気にもなれない。
妙に身体が軽いので、ちょっと出かけようと身支度をする。
今日はなんか気分がいいので、隣の市まで歩いていこうか。
外は春の訪れを感じさせるように穏やかな風が吹いている。
軽やかな気持ちで、思いっきりスキップをして進んでいく。
すれ違う人は誰も、不思議そうな視線をこちらに向けない。
一人だった、孤独だった、でもとても自由で幸せな気分だ。
市民会館が見えてきて、そこに出てた看板に、足が止まる。
そのままスルーすればよかったのに、身体が勝手に動いた。
やっぱりそうだ。お坊さんの読経と、誰かのすすり泣く声。
生きていたくなくて、死んだ。それが、この地獄を作った。
この今日は何度でも繰り返す。心に罪悪感が生まれるまで。
死にたくて死んだわけじゃない。でも、後悔はしていない。
視界が、水面に映るように揺らぎ始める。また初めからだ。
どれだけ今日を見たって、心はもう二度と揺らぎはしない。
それでも神様は、何度でも、何回でも、地獄を見せるのだ。
ゆっくりと目を閉じて、開くと、また自室の天井が見える。
今日は特別な日だ。どこまでも永遠に繰り返す特別な日だ。
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