僕はあと1年で死ぬらしい

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 今日は特別な日だ。  僕の40歳の誕生日。これは僕にとって何より大切で、40年前の僕が誕生した日と同じくらいに特別な日だ。現在は一人暮らしではなく祝ってくれる人が一緒にいる。 「誕生日、おめでとう」 「ありがどう」  噛んでしまった。相変わらず、大事なところで噛む癖は治っていない。きっと治らないまま人生を終えるのではないだろうか。そう言ったら、隣で微笑む元死神に頭を軽く叩かれた。 「私がいれば他のは寄ってこないよー」  それはそうかもしれない、と思う。奪う側だった彼女が、こちらについているのだ。そもそも早死にの原因が彼女だったのであれば、そう早く死ぬものでもないだろう。  1年前の今日、僕は何を思ったか彼女に告白した。一目惚れというやつだと思う。死神を名乗りながらも儚げな雰囲気を持ち、それでいてなんだか投げやりな彼女に、僕は自分でもよくわからない運命を感じた。そして思わず行動していたのだ。  最初こそ気味悪がって近寄らない彼女だったが、僕があまりにも平凡で子孫を残す可能性もほとんどない為に呪う事を諦めたのか、段々とまともに話してくれるようになった。1年間、手は出さず、ただ喋るだけの付き合いで続くなら呪う事も止めてやる、と彼女は提案してきたのだ。僕は40歳までに死ぬと聞いていたから、次の誕生日まででいいならと快諾した。  モテ期なんて無かった。だから今生き延びて、彼女とこうして一緒にいる。  手を出す度胸なんて無かったし、機微もよくわからないし、ときどき世間ずれした事を言い出す彼女を諫めたりするだけで、僕は楽しかった。最悪、死んだっていいやと思っていた。こんな天使みたいな人に殺されるならそれでいいや、と。  結局、明日も明後日も僕には巡ってくるらしい。
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