僕はあと1年で死ぬらしい

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 どうして僕らが呪われなければいけなかったのか、僕は不躾にも聞いてみたことがあった。彼女は嫌そうな顔を隠しもしないで見せて、しかし話してくれた。別に語って問題があるわけでもなかったのだろうと思う。 「君の何代前かはわからない、もう私達でも把握しきれていないけれど、単純な話でね。君たちのご先祖様は、私のご先祖様と婚約してたんだってさ…」  話を聞いていけば、僕のご先祖様が一方的に婚約を破棄したらしい。40歳の男が婚約、それも再婚の話があるというのに、まだ歳若い別の女性に現を抜かしてしまったのだとか。自分の先祖の話とは言え、僕は呆れてしまった。  それを受けた彼女のご先祖様の怒りは相当なものだったが、ただの人であれば呪いを掛ける事なんて出来るものではない。しかし、そこは只者ではなかったらしい。簡単に言えば、呪術の素質があった、とでもいうところだろうか。なんでも呪いが成就してしまい、僕のご先祖様はその年を生きられなかった。  しかし僕の先祖という割には手が早かったようで、その現を抜かした相手は子供を授かっていた。逆上した彼女の先祖はその子も呪い、それからずっと呪い続けなければならない呪縛に囚われたのだと、彼女は言った。 「かえって何もしないでくれたらこんなに続かなかったんだけどねー」  子供がいない場合は呪うな、というのが彼女の家系では今日まで伝えられてきた事だとか。父親の言いつけを守らなかった、いや、守れなかったから、僕は生かされているらしい。  彼女の家系は産まれてくるのは女子ばかりで、呪術の素養の薄い男子は産まれられないか、産まれても生きられない。人を呪わば、というやつなのだろうか、とぼんやり考えてみる。呪われた側も、男子しか産まれないわけではあるが。 「君はそんなに悪い奴じゃないとは思うし、女の気配もしないし。そのままでいてくれたら…まぁ、私も手間が減って楽だし?」  だから40歳の誕生日まで付き合ってあげるよ、と気怠そうな中に笑みを浮かべて彼女は言った。  そしてそれは叶ってしまった。彼女は、そして僕は、どうなるのだろう。
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