僕はあと1年で死ぬらしい

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 幸せな時間に水を差す事にもなりかねないが、珍しく真面目な顔で話を切り出した僕。それはこれからどうするか。母親に会いに行くと言った事も、一緒に伝えてみる。 「でも、勝手に親に紹介する約束とかされても困るし、私まだ釣り合う年齢じゃないし…」  そう言って白い頬を真っ赤にする彼女は、やっぱり綺麗で、それでいて可愛らしい。年齢の話なんて、正直どうでもいいと思う。むしろ僕の方が若い子に相手にされないオジサンになってしまったわけだが、それでも構わないのだろうか。  ここ1年間彼女と話したりしているうちに、僕も普通ではなくなってしまったのかもしれない。実のところ嫌がっているかどうかなんて判別もつかない筈なのに、悪からず思ってくれているのだと考えてしまう。 「それに、私の親が何て言うかわからない…いや、うん、もう当代のである君を呪う必要はなさそうって言ってはあるけどさー」  けれど彼女は僕の考えている事を裏付けるような事を言った。親に話した時の反応を想像しているのか、少し顔をしかめる。そんなところはどこにでもいる女子大生という雰囲気だ。 「呪わなくなった時にしっぺ返しとか、ありそうだけどね」  歯切れの悪い彼女にぼそりと言う。すると、彼女の肩が小さく跳ねた。呪術の才能がありながら、怖い話が苦手な彼女だ。何が起こるのか想像してしまったのだろう。 「呪われた原因って、僕の先祖が君のご先祖様との婚約を破棄したからなんだろう? 僕らが結婚したら納まるんじゃないのかな」 「だ、だから結婚とか早いんだよー!!」  僕の提案に真っ赤になる彼女を、今すぐにでも実家に連れて行きたい。串刺しにされるかもしれないけど、彼女の家に挨拶に行きたい。そして願わくば、なんて。  来年の誕生日は、僕にとっても彼女にとっても、そしてお互いの家にとっても、もっと特別な日になるだろう。そんな気がした。
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