ミイラとりがミイラに。

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* 仕事中。 取引先の同年代の気心の知れた女子数人と交わしたラインのやり取りにざっと目を落としていた武田は溜息を漏らした。 数日前の内容に肩をすくめる。 ―――――あの時はまだ強気だったんだけどなァ。 視線の先は営業部から見える総務部の波の姿。 お茶くみをする彼女の指にはエンゲージリング。 広瀬め。 あんなもんプレゼントしやがって。 泣いてる野郎共結構いるんだぞ。 けども――――― 時折、そのリングを嬉しそうに見つめる波の横顔に再度溜息が出てしまう。 キッパリ諦めた方が彼女も幸せか。 「煙草行ってきまーす」 席を立って彼女から背を向ける。 こんな引きずる恋愛をしたのは初めての武田だった。 終わり。
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