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(!?なんで!?なんで私!?)
地味な見た目をしている事を自負してる波が痴漢に会う事はこれが初めての事だった。
(ヤダヤダ気持ち悪い!!)
臀部を這う感触に波は戸惑いを隠せない。
そんな波の肌を服の上から触っていた中年男性の手を捻った男がいた。
「ちょっとオッサン、何人の女のケツ触ってんの?」
「広瀬君!?」
通常ならこの場所に居る筈の無い広瀬の登場に驚く波を余所に蓮は言葉を続ける。
「この事ネタにしてアンタ強請ってやろうか?―――んで、付きまとい倒して笑えない人生歩ませてやるってのはどうだ?」
言葉の最後に蓮は凶悪な視線を痴漢行為を行っていた男性に向けた。
「二度とコイツに近付くんじゃねェ」
ヒィ!!と悲鳴を漏らしたその人物は丁度着いた駅のホームへとおりて行った。
「…広瀬君、なんで?」
波は未だに目を丸くしている。
何故なら、彼はいつも電車ではなく車で出勤しているのだ。
波はハッとした。
お礼がまだだった。
「広瀬君、助けてくれてありがとう」
「おー。ってかもう少しお前も気をつけろよ」
「気を付けるって…何を?」
不思議顔な波に、蓮は眉を歪ませる。
「あんな無防備な顔して溜息吐いてんなっつってんの。満員電車であんな顔してちゃ自分から痴漢呼寄せてる様なもんだろ」
「溜息…って、誰の所為で…」
溜息を吐いてたと思っているのだ。と続け様とした波の頭に疑問が過ぎった。
「―――私が溜息ついてたの、いつから、どこで見てたんですか?」
波の質問に蓮はいつもの余裕さを雲散させた。
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