合コン(続き)

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合コン(続き)

「あたしも見たーい!!そういえば今まで見た事無かったもんね?」 「うん。無かった」 「え…あの」 一斉に興味を持たれた波は内心焦る。 この様な席で眼鏡を掛けている人に眼鏡を取ってくれという展開は多いと聞く。 と、云う事は何かしらの期待をされているのだ。 しかし、自分の素顔に自信が無い波は、眼鏡を取った事で皆を落胆させてしまうのではないかと懸念する。 だが、頑なにそれを拒否したら場の雰囲気も悪くなってしまうだろう。 波は一瞬躊躇った後に自分のメガネフレームに手を掛けた。 「わかりました」 「おお!」と盛り上がる中でゆっくりと眼鏡を外しかける。 波の綺麗な顔が一瞬だけ露になった。 一同は息を飲む。 その反応に、物凄く引かれたと勘違いした波は直ぐに眼鏡を掛け直した。 「やっぱり出来ません!!」 恥じらいから波は俯く。 「…すいません」 希望に応える事が出来無かったと弱々しく謝る波の顔は真っ赤だ。 その姿に、キュン。としたのは女性陣含めたその場の全員だった。 「古村さんカッワイーー!!」 斉藤と云う名の女子が波に抱き付く。 隣に座った子も波の顔を覗き込む。 「古村さんキレイなんじゃん!」 「あの!?ちょっと!?」 同性に抱きつかれただけで波は戸惑いを隠せない。 「いーなー斉藤さん!!」 「古村さん、今日は飲もう!!盛り上がってこ!!」 一人の男は本音を漏らし、もうひとりは飲み物を注文する為引き戸を開けて店員を呼ぶ。 意外な周囲の反応に目を丸くする波だったが、とにかく場の空気を下げないで済んだ事に安堵の笑みを漏らした。 そんな波を武田は静かに見詰めていた。
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