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蓮は面白いものを見たとほくそ笑む。
「へ~、アンタでも恋するんだなー」
「~~~ッ」
反論出来ない彼女の姿に、蓮のイタズラ心に火が付く。
「なァ?ちょっとアンタ俺にチューしてみねェ?」
「はァ!?」
いきなりとんでもない事を云い出した蓮に波は真っ赤になって引いている。
「なんで私がそんな事しなきゃならないんですか!!」
「怒鳴るなよ。俺はただ、アンタの恋に協力を申し出てやってんの。アンタ色気ねェから普通の告白なら相手も落ちねェだろー?なら突然キスかませば万が一の可能性でも相手落ちるかもしんねーだろ?俺ァその練習相手になってやろーと思ってよ」
云って蓮は書類を抱える彼女へと迫る。
「ちょっと!?待って…」
思わず後ずさった波を蓮は壁際へと追い詰めた。
「ホラ、早くしろって」
彼女から眼鏡を外した蓮は波へと更に顔を近付ける。
波は真っ赤な顔を伏せた。
「社内でもモテルあなたと違って私は経験が少ないんです!!」
恋愛経験の少なさをカミングアウトした波に蓮はニヤリと笑う。
「ヤッパリな。どーりでアンタ色気皆無に近ェ筈だわ。けど年下相手に此処までビビっか?」
楽し気な蓮の言葉に、馬鹿にされたと感じた波はキッと彼を見詰め返す。
「わ、私にだってやれば出来ます」
「アンタにはムリムリ」
横柄な態度の蓮は「出来るもんならやってみろ」と目を閉じる。
蓮が嫌いな人間にここまでやれる理由は、自分の挑発には乗らないと確信してるからだ。
こんな真面目なタイプは好きな奴に操たてているだろうから、そいつ以外には絶対にしない筈だと。
相手から何も無い反応に、蓮は「な?」と波から身体を離そうとする。
その彼の唇に自分のそれを押し付けたのは波だ。
蓮が驚きで目を開けると、目を瞑った波の顔。
間近でいる波の端正な顔立ちに蓮は意外に感じる。
そういえば、今まで一度も彼女が眼鏡を外した場面に出くわした経験が無かったのだ。
先程、眼鏡を外した時もからかう事に夢中であまり良く見て無かった。
柔らかい唇の感触を感じながら、キスに慣れてる蓮は自然な仕草で波の後頭部に手を添える。
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