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合コン
お洒落な造りの居酒屋の一室。
古村波は三対三の合コンの席に居た。
波と同じ総務課の同僚である女子からお願いだから出てくれと半ば強引に頼まれ今に至る。
テーブルを挟んで向かい合わせの席に座る男性陣は同じ会社の営業部の担当社員だそうだ。
メンバーは順番に挨拶をしていき、最後にその番が回って来た波は軽く会釈した。
「総務課の古村波です。歳は26です」
波の言葉少ない挨拶に一瞬シーンとなる。
「…それだけ?」
「もっとこう…趣味とか何か無い?」
ふたりの男性意見に波は頷く。
「特に」
無表情な波の態度に慌てたのは彼女を誘った女子社員だ。
「あのッ!!古村さんは真面目なんですよ!」
「そうそう!!でもッ最近なんか魅力、みたいのが出てきたってウチの部署で有名なんです!」
必死にフォローを入れるふたりにクスリと微笑んだ男がいた。
「知ってる」
大人の余裕さを漂わせる彼に波は視線を向ける。
確か彼の名は―――武田さとし。
事前に女子達から受けていた説明によると、彼はトップクラスの営業マンらしい。
「私の事、知ってるんですか?」
率直な質問を投げかけると、武田は人の良い笑みを返した。
「うん。総務のスッゴイ真面目で有名な古村ってゆー子が、突然可愛くなったって噂。それって君の事でしょ?」
「わ、私じゃありません!」
波の頬が赤く染まる。
「私なんか、可愛くありませんし…」
初めて無表情を崩した波に、他の男ふたりも気乗りする。
「ね、古村さん。ちょっと眼鏡外して貰えません?」
「あ、俺も古村さんの素顔見てみたい」
男性陣の食い付きに女子二人も同調した。
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