院長先生の手記

4/6
前へ
/23ページ
次へ
 ポーラに必要なものは、希望であった。 「運命よ、そこをどけ」  彼女にそう言わしめることが可能なのは、未来への強い願望に他ならない。  私は、ふと思い付いたアイデアを実行してみることにした。  彼女の親友である仔熊のぬいぐるみ、フェルカにひと肌脱いで貰おうと、私は彼をロンドンに連れて行った。  学会で久し振りに会った友人のアルバートは、私の持っていたぬいぐるみを見て 「よう、随分顔に似合わないものを持っているな。パブのお姉ちゃんへのプレゼントかい?」  などと軽口を叩いていたが、私の計画を聞いた彼は喜んで協力すると言ってくれた。  私が託した布製の使者を大切そうに抱え、彼はニューヨークへ帰って行った。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加