旅するこぐま

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 やがてフェルカが旅立ってからちょうど一年が経った頃、彼はポーラのいる病院に帰ってきました。  院長先生はぬいぐるみの背中に貼り付けてあったカード――病院の住所などを記した説明書き――を剥がし、彼をポーラの部屋へ持っていきました。 「おかえりフェルカ! たくさんのお手紙ありがとうね!」  フェルカを抱き締めて、一年振りの再会を喜ぶポーラ。とても長い旅だったので、彼の身体にはいくつか糸がほつれた跡がありましたが、どこかの『親切なお医者さん』が丁寧に手当てをしてくれていました。  そして、おそらく世界で一番長い距離を移動したであろう、赤いマフラーを巻いたぬいぐるみの仔熊は、またいつもの窓辺に座りました。
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