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〈ああ、最高にいいお湯だわ…  これほど幸せなことってないわ…〉 女優鮫島真樹は、温泉の想いを胸に万感の想いを込めて湯に浸っている。 できれば、(うつむ)きではない死体役でなければさらに最高だったと思ったが、 あまり贅沢なことは考えないことにしたようだ。 〈やっぱり、ヒノキの香りが最高だわ!〉 温泉気分は確かにあるが 入浴剤であったことだけが、少々残念だったようだが、 自分自身にウソをついていた。 そんなことを考えていると、突然目の前が真っ白になり、 闇が訪れた。 「いい根性をしているな。  この詫びに、次は台詞をやろう」 監督は満足そうに頷いていた。 こうして、真樹は一流女優への道の足がかりを掴んだのだった。
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