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おふロワイヤル
私は主婦である。
午前中はパートに出る。そして買い物をして帰り、夕食を作り、それから今はシンクに向かって洗いものに勤しんでいる。
何と主婦であることだろう。
カウンターキッチンの向こう側。食卓には旦那と息子が座っている。
「今日はスーパーの出来合いばかりか」と、旦那が文句を言う。
「ちょっと事情があってね。ごめんなさい」と、私は答えた。
「たまには良いんじゃないの」と、息子が言う。
「そうだな」と、旦那は食事を続けた。
何気ない家庭の一幕である。
「ごちそうさま」と、旦那が箸を置く。
息子は一足先に食事を終えて、マンガだか小説だか、主婦には良く解らないものを読み耽っている。
私は主婦らしく願う。
どっちでも良いから、その食べ終わった食器をさっさとこっちに持ってこい、と。
結局、私が食器を片づけると、
「今日は俺とお前の二人だけか」
旦那が息子に言っていた。
それを聞いて私は、ああ、今日も始まるのだなと思った。
そこに入り口のドアが開く音がする。
娘が帰って来たのだ。
「ただいま」
案の定、娘がリビングに入って来る。
娘は入口のところにバッグを置いて、高校の制服を着替えもせずに食卓に座った。
「間に合ったね」
娘が不敵に笑う。
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