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無言のまま食べ終わり、シンクに食器を運ぶ。
ーーーこれ、洗うんだろうか? 私が。
カーディガンの袖を腕まくりすると、後ろからやってきた課長が言った。
「洗いものは俺がする。お前は、座ってろ」
「あ、いいんですか? ラッキー」
ーーー夜ご飯も済んだし、少しだけラッキーだったな。だけど、今、課長ってば「座ってろ」って言ったような……。
「あの、課長」
「珈琲を入れる。飲んで行け」
何故、帰らずに座ればならないのか尋ねる前に言われた。
ーーーあぁ最悪。私、珈琲飲むと眠れなくなるんだけど。
肩を落として椅子に座った。
ーーー全く、いらない親切は、本当迷惑なだけなんだけど。
私は、さっきタオルをいらないと言った課長の気持ちが今になって理解出来ていた。
課長の後ろ姿は、冴えない一人暮らしの男そのものであり、哀愁さえ漂っていた。
ーーーあぁ、あれがいつもパリっとしたスーツを着こなした上野課長なのって話。酷いなぁ。会社では、イケメン課長とか言われて無かったっけ?
確か、バレンタインにも本命チョコをたくさん貰ってたような。
それがプライベートは、こんな感じ? 普段はダサダサで、しかも小うるさくて、上から目線だなんて。
私は絶対に嫌だわ。
こういう性格ブスな男。
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