最悪の事態

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ーーー珈琲って言ったって。インスタントだなんて。鼻で笑える。座って待たせとくなら豆からひいてよ。本格的に。 出された白いコーヒーカップ。注がれたコーヒーを覗く。 ーーー普通、至って普通。 「いただきます」 「うちの社オリジナルブランドのインスタントコーヒーだ」 「はあ、あまり珈琲は飲みませんので」 「お前は自分の働いている会社がどんな製品を作ってるとか把握したくないのか?」 前のめりになって抗議してくる課長。 「一応、把握してますけど」 「一応とか、たぶんとか、大体とかは使うな。そんな曖昧な答えは、あり得ない」 「はあ……」 ーーー疲れるなぁー。上野課長って。細かいよ。疲れる生き方してない? この人。 課長のお小言を珈琲を眺めながら聞いていた。 「あの課長。課長は、大事なことを忘れてます」 「は? 俺が? 何を忘れたんだよ」 ムッとする課長。 「ホットコーヒーは、温かいうちに飲むのが一番美味しいはずです。お蕎麦の茹で時間を気にするなら、そこも気にするべきでは」 課長は私に言われて冷めた珈琲に目を落とした。
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