最悪の事態

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「課長! あの倒れそうになってたのを助けてもらってありがとうございます。ですが!」 課長がうざったい感じで私を見た。 「なんだ」 「あの、今、私と唇が触れましたよね?」 「ああ、酷い目にあった」 ーーー酷い目?! 頭の中が煮えくりかえって、気が変になりそうだった。 「酷い目にとか口が悪すぎます!ひどい目にあったのは私の方ですよ!」 「お前が?」 課長が私にじりじりと近づいてきた。 イケメン課長と言われるだけあり、間近で真剣に見ると……。 黒目がちの瞳には、さほど大きくないはずなのに力を感じる。吸い込まれそうな気がしてくる。長い下睫毛、通った鼻筋。 輪郭のはっきりした唇。 ボサボサではなく、適当に遊びのある毛先。 生唾をゴクリと飲み込む。 ーーー何さ、今日はイケメンぶってる。 さっきより近づいてきた課長の顔。その表情は冷たい感じがした。 「お前にとったら……ひどい目じゃなくて、良い目にあったの間違いだろ?」 課長は薄ら笑いを浮かべてる。 「は、良い目に? 課長うぬぼれてませんか?」 うぬぼれ課長は、更に私に顔を近付けてきた。 「み、皆が皆、課長をイケメンだとか素敵だとかチヤホヤすると思わない方がいいですよ」 「私は違う。そう……言いたいのか?」 「そうですよ! それに…んっ!!」
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