最悪の事態

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課長にさっきの体勢とほぼ同じ感じでキスされた。 さっきのは、痛かった。 だけど今度のは……。 柔らかく触れるだけのキスが、百合の花の香りみたいにむせかえるような課長の自信を感じさせた。 無理矢理でなくても、俺なら女を感じさせるキスが出来る。もしくは、俺を素敵だと全ての女に言わせてみせる。 そんな自信ありげな男がする横暴さがかくれた黒いキスだった。 ーーー最悪だ。 唇を離した時のどうだ?! 良かったろ? みたいなドヤ顔に心底寒気がした。 いつもなら、ここでのぼせ上がる女の顔を何回も見てきたんだろう。 課長は私の表情を見てひどく驚いていた。 「……怒ったのか?」 この世に存在しないものを見てしまったみたいな表情している。 「怒りますよ。当然でしょう? 最悪な気分で吐きそうです」 昼に食べたカレーが喉まで出かかる。 「お前そこまで言うか?」 「課長、さっき私が言いましたよね? 課長のことを皆が皆、チヤホヤする訳じゃないって。その証拠に今……」 課長を睨みつける。体が熱くなりムカムカして胃液が上がる。 「最高に最悪な気分です!」 私は課長に体当たりして、課長を端に寄らせ自分が先に裏道を出た。 ーーー最悪だ。マジで吐きそうだ。私の人生計画が狂い始めてる。何もかも……あの下に住んでるくせに、うえの課長! あの、まぎらわしい名前を持つ男の存在のせいだ! 最高に最悪! 上野課長を心から呪いたくなってきていた。
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