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「あ、忘れてました。上に越して来た……ん? 嘘!」
課長に言いながら、よくよく考えたら私ってば課長の上に住むわけ?
両手で口を押さえた私は、引っ越しタオルを下へ落としてしまった。
タオルをゆっくり拾う課長。
「ぞうきん、落ちたぞ」
「あ、どうもって……ぞうきんじゃないし。た、タオルですから! あの、引っ越ししてきたので……」
拾ってもらったタオルを、また課長に渡す。
「薄手のタオルなら間に合ってる」
「はあ?普通言いませんよね? 引っ越しの挨拶に来たのにタオルは、いらないとかって」
「いらないものは、いらない。不必要なものはゴミになるだけだ」
「ゴミって! ひどい!」
「なら、言わせてもらうが、何故引っ越しの挨拶がタオルなんだ? 何故だ、山田」
課長の鋭い瞳が、光った。
「なぜ、お前が俺の下では無く上に住むんだ?」
「え?、引っかかる所は、そこですか?」
「下なら許せるが、上? 不愉快だ」
ーーー知らないよ。そんなことさぁ。
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